-THE COFFEE JOURNAL-
#1「酸っぱくないやつありますか?」
「浅煎りは苦手なんです。」
「コーヒーは好きなんだけど、酸っぱくないやつありますか?」
店頭で、よく聞かれる言葉です。
もちろん、あります。
ただ私たちは、すぐに深煎りのコーヒーをおすすめする前に、少しだけ話を聞いてみることがあります。
どんなコーヒーを"酸っぱい"と感じたのか。
普段はどんなコーヒーを飲んでいるのか。
どのくらいの酸味なら心地よく感じられるのか。
その日のお客様も、最初は「酸っぱくないコーヒー」を探していました。
お話を聞いていくと、酸味がまったく苦手なわけではありませんでした。
強い酸っぱさを感じるコーヒーは、一杯すべてを飲み切れない。
でも、ある程度の酸味なら大丈夫。
「酸味が嫌い」という一言のなかに、もう少し細かな好みが隠れていたのです。
そこで、深煎りのコーヒーではなく、OUTSTANDINGのラインアップから、浅煎りと中煎りの間くらいに仕上げた、エチオピアのタミル・タデッセを試していただきました。
浅めの焙煎ですが、酸味だけが前に出るような味ではありません。
エチオピアらしい華やかな香りと、丸い酸味で果実を思わせる明るさ。そして、最後まで無理なく飲み進められる甘さを持っています。
飲み終えたお客様から、こんな言葉をいただきました。
「初めて、おいしいライトローストを飲みました。」
私たちがうれしかったのは、浅煎りを好きになってもらえたことだけではありません。
「酸っぱいものは苦手」という言葉の向こう側に、
その人がまだ出会っていなかった“好きな味”があったことです。
好みは、正しいか間違っているかで決めるものではありません。
深煎りが好きでもいい。
酸味が苦手でもいい。
ライトローストを無理に好きになる必要もありません。
けれど、自分では苦手だと思っていた味のなかにも、焙煎や豆、淹れ方が変われば、心地よいと感じられる一杯があるかもしれません。
「酸っぱくないコーヒーはありますか?」
その質問に、ひとつの正解があるわけではありません。
だからこそ私たちは、その人にとっての「酸っぱい」がどんな味なのかを、一緒に探してみたいと思っています。
あなたが苦手だと思っているのは、本当に“酸味”でしょうか。
ご自分に合う一杯を求める旅はここから始まるのかもしれません。
To Be Continued...
THE COFFEE JOURNALでは、焙煎や抽出の話だけではなく、コーヒーの歴史や文化、生産地のこと、日々の発見や研究、そして一杯のコーヒーの先にある豊かな時間について、店頭でいただいたお客様の声も交えながら綴っていきます。
コーヒーにはひとりひとりに好みがあります。
もちろんすべての人にあてはまる正解があるわけではないですが、コーヒーには、まだたくさんの可能性があります。
その可能性を、一緒に探していけたらと思っています。
↓今回登場したタミル・タデッセさん生産の珈琲豆です